スペインエルモラール村

スペインの現状と、高齢化の村エルモラールのCOVID-19対策について。

振り返ると2月下旬は、多くのスペイン人に「日本の家族は大丈夫?」と、励ましの声をいただいていたのが、遠い昔のことのようです。3月14日から スペイン全土に「警戒事態」宣言が発令されてから事態は一変、ロックダウン。外出禁止になりました。最近は日本から、心のこもったエールをいただくようになりました。ありがとうございます! 私達は元気です。今日は、スペインのリアルな現状と、ロジェールが村長を務めるカタルーニャの小さな村エルモラールのCOVID-19対策について綴ってみようと思います。

スペインのリアルな現状(2020/3/25現在)

その日、私はずっと楽しみにしていた、友人のレセプションパーティーのため、バルセロナに行くことを泣く泣く諦めることにしました 。マドリードほどではなくても、バルセロナでも新型コロナウィルスは、日に日に猛威を奮っていました。 バルセロナから電車で2時間の場所にある私の住むエルモラール村は、大半が高齢者の為、万が一自分が原因でウィルスが広まり、そのせいで多くの人を危険にさらしてしまったら、と想像すると怖すぎて、友人には申し訳ないと思いながらも苦肉の決断をしました。その翌日、3月14日に、ペドロ・サンチェス首相がスペイン全土に「警戒事態」宣言を発令。新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐため、スペイン全土で人の移動を制限すると発表。薬局や病院の受診、食料品の買い出しなどの場合を除き、15日間外出が禁止され、その一週間後、状況が悪化する中、新たに15日間の延期が決定しました。

外出禁止、スペイン人から学ぶこと

状況が急変したことに対応できなかった人びとは、通りを歩いたり、公園のベ ンチに座って いるだけで、警察官から取り締まりを受け、罰金を課せられました。これは冗談ではないんだ、人びとが理解するまで時間はかかりませんでした。これ以上の感染を防ぐ為「#mequedoencasa (私は家にいます)」という動きがSNS上で広がり、ミシュラン星付きシェフ達も率先して、インスタライブなどでクッキング動画を公開、引きこもり生活をみんなが少しでも豊かに過ごせるよう、毎日元気づけてくれています。

★★★ABaC Jordi Cruz @jordicruzoficial アバック・ジョルディシェフのInstagramはこちら
★★Cocina Hermanos Torres @hermanotorres トーレス兄弟のInstagramはこちら

また、夜20時、医療関係者への感謝と応援の拍手(Aplauso Sanitario)は途絶えることなく、毎晩夜空に鳴り響いています。もちろん、都市部の医療崩壊、 経済危機など深刻な問題は山積みですが、どんな状況でもユーモアと感謝を忘れずに、連帯感で明るく乗り越えるスペイン人から、日々大切なことを学んでいます。

お年寄りを守りたい。エルモラール村のCOVID-19対策

バルセロナから南下すること約2時間。スペインワインの銘醸地として知られるプリオラートの南西に位置するエルモラール村は、人口300人のうち大半が60歳以上の、高齢化が進む農業の村です。

◯秘境?エルモラール村は何処に。
https://puente-japon.com/grifoll-declara-location1/

高齢者にとって、新型コロナウィルスは命に関わる病気であり、万が一、 エルモラールで感染者が出た時のリスクはとても高く、なにがなんでもウィルスから村民を守る必要があります。そこで、村長ロジェール・グリフォイ・デクララは、エルモラール村ならではの「COVID-19対策案」を掲げ、実行しています。

  • 80歳以上の村人で、食料の買い出しが必要な場合、村役場の職員が代わりに買い物を代行し、 家まで物資を届ける。訪問のさいは 、マスクと手袋をし、 お年寄りの感染リスクを減らす。
  • 80歳以上の村人で、電球の取替えなど必要な事は、村の職員が代行する。
  • 80歳以上の一人暮らしの方には、二日に一度、職員が電話をし、様子を伺う。
  • 3月15日の外出禁止令以降、 エルモラール村のセカンドハウスを目的とした都会からの入村を制限 。
  • 消毒など、村の衛生管理に細心の注意を払う。

外出禁止令前後に、感染者の多いマドリードから、セカンドハウスのある地方に多くの人びとが移動したことが、スペイン全土に感染が拡大した原因の一つと言われています。子供や若者から高齢者に感染する事例が多数あることから、エルモラール村は3月15日から入村を厳しく制限しています。


エルモラール村のCOVID-19対策への取り組みが、テレビに取り上げられました。
CANAL REUS TVのWEB版と、インタビュー動画はこちらから

 

農業で村を元気に。村長ロジェールのCOVID-19農業対策

スペインは、ブドウの作付面積世界一、オリーブオイルの生産量世界一、アーモンドの生産量世界二位、と歴史深い農業大国です。スーパー、薬局、病院以外は全て閉店、ほとんどの仕事が“テレワーク”で行われる中、みんなが生きるために必要な食料を生み出す農業 のための外出は許されています 。こんな状況でも作物は日々成長し、手をかけた分だけ秋には豊かな実りを与えてくれます。

エルモラール村は、ローマ時代以前から、ワインとオリーブオイルを造っている歴史ある村です。

◯プリオラートの歴史を紐解く。
https://puente-japon.com/historiadepriorat1/

ロジェール村長が掲げるスローガンも、
「ブドウとオリーブとアーモンドで村を元気に!」
農業での村の活性化を目指しています。そこで、エルモラール村の「COVID-19農業対策」をご紹介します。

 

  • 同じ畑(区画)で共に働けるのは2名以内とする。
  • 十分に距離をとる 。
  • 高齢者の畑仕事を禁じる。
  • ボランティア(Banco de Tierra)の若者が、高齢者の畑仕事を代行する。

エルモラール村では、80歳を超えても畑仕事に精を出す人びとがいます。急斜面のぶどう畑での、手摘み収穫は本当に過酷です。そんな中、80歳のおじいさんが、誰よりも 軽やかに働いているのです。「大自然の中で、こんな気分の良い仕事は他にはないよ」と、熟練の速さでぶどうを摘みながら何度もつぶやいていたのが印象的でした。

高齢になっても働くのは、畑仕事が生きがいだから、という理由もありますが、 先祖代々手塩にかけてきた畑を、自分の目が黒いうちはヨソモノに売りたくない、後継ぎに譲りたいけど、 息子たちは都会に出て農業に一切興味が無いため、自分が現役で働くしかない、というのが現実のようです。どんなに元気なおじいさんたちも10年後は90歳。リタイヤは避けられません。すると一気に、農業放棄地が広がり、村の原風景が失われたり、村の経済に無頓着なアメリカや中国など外国の企業に、ぶどう畑を買収されることを防ぎ対策することも、村の大きな課題としてロジェールは取り組んでいます。


エルモラール村 村長 ロジェール・グリフォイ・デクララ
ワイナリー グリフォイ・デクララ5代目オーナー醸造家でもある
グリフォイ・デクララ日本語HPはこちら

日本の皆さまに一言

3月16日、プリオラート地方(コマルカ・プリオラート) に、新型コロナ感染者第一号のニュースが飛び込んできました 。どの村の誰、年齢、職業、どこで感染したのか、全ての情報が23の村々(自治体)を瞬く間に駆け抜けました 。幸い新たな感染者は今のところなく、その方も重症にならないまま自宅療養されています。プリオラートに住む唯一の日本人である私が、第一号にならなくて本当に良かったと、正直のところ思ってしまいました。ロジェールが、エルモラール村を守るために戦っているので、どんな時もその力になれる自分でありたいと思います。

外出禁止令は日に日に厳しさを増し、警察も取り締まりを強めています。 カタルーニャでは、食料調達など、やむを得ない理由で外出する際、”行き先と理由、個人情報”を記したカタルーニャ州政府発行の書類を携帯することが義務付けられました。 みんなが一丸となって規則を守り、他者を思いやることで、この緊急事態の終息が、一日でも早まると信じています。

最後に日本の皆さまに、ロジェールからのメッセージをお伝えします。

「東京オリンピックが延期になってしまったけれど、Animo! がんばって!」
近い将来、またバルや通りで会えるのを楽しみにしています。」

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★エルモラール村からほぼ毎日発信。原田郁美のInstagramはこちらです。
★”スペインワインと食協会(AGE)”で、スペイン食文化についての記事を寄稿しています。よろしければこちらからご覧ください。

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